RINとは何か?
RIN (リン)とは、Relative Intensity Noiseの略で、相対強度ノイズと呼ばれます。RINは、レーザー光の強度の揺らぎを表すパラメータです。レーザー光の強度のゆらぎは、レーザーから射出される光子の波長(エネルギー)が一定ではないことに由来します。
RINは、レーザーの出力強度の平均値に対する単位周波数あたりの変分(フラクチュエーション)として定義されます。
RINは光通信における信号対ノイズ比(SN比)に直接影響を与えます。RINが低ければ光通信の信号対ノイズ比が向上し、単位帯域当たりの通信容量が増加します。このため、近年の光通信容量の増大を支える上で、RINの重要性はますます高まっています。
相対強度ノイズ(RIN)測定システムとは?
相対強度ノイズ測定システムとは、レーザー光の強度ノイズ特性を計測し、その結果を定量的に可視化する装置を指します。
ノイズの特性を客観的に評価するために、RINの測定結果はスペクトラムとして表示されます。
相対強度ノイズ(RIN)測定システムの役割とは?
相対強度ノイズ測定システムは、光通信システムの設計・評価・検証において欠かせないツールとなっています。
レーザーの設計・開発段階においては、新しく設計されたレーザーの性能を評価し、その品質を向上させるためのフィードバックを提供するなどの重要な役割を果たします。
測定により得られたデータにより、レーザーの強度ノイズの原因を理解し、それを低減するための戦略を立てることが可能になります。
また、レーザの強度ノイズが光通信システム全体の性能に与える影響を理解する上でも重要です。相対強度ノイズ測定システムを使用することで、レーザーの強度雑音を把握し、光通信システムの伝送容量と信頼性を高めることが可能になります。
近年では光通信用のレーザーの低消費電力化が重要な課題です。レーザーの相対強度ノイズは消費電流とトレードオフの関係にあるため、低消費電力化と通信容量の増大を両立させるために、レーザーとそれを用いる通信システムの両方の設計において、相対強度ノイズ測定システムの重量度は高まっています。
レーザーの製造段階においては、RINの測定により、レーザーの強度ノイズが許容範囲内にあり、その特性が製品仕様に適合していることを確認することができます。相対強度ノイズ測定システムによるRINの評価は、レーザーの品質を保証し、その性能を最大限に引き出すために不可欠な工程と言えます。
相対強度ノイズ(RIN)測定システムの種類と比較
相対強度ノイズ測定システムには、大きく分けて2つのタイプがあります。
一つは周波数領域でスペクトラムとして測定する方式で、もう一つは時間領域で過渡特性として測定する方式です。それぞれの方式について、詳しく説明します。
スペクトラム相対強度ノイズ測定システムの構造
スペクトラム相対強度ノイズ測定システムの主な構成要素は、光検出器、シグナルアナライザ、デジタルマルチメータおよび解析ソフトウェアです。
レーザー光は、光検出器により、電気信号に変換され増幅された後に、シグナルアナライザに入力されます。またデジタルマルチメータにより、光検出器の受光電流を計測します。シグナルアナライザにより得られたスペクトラム信号は、受光電流値とともに解析ソフトウェアにより数値処理され、スペクトラムとしての相対強度ノイズが得られます。
このタイプのシステムは、スペクトラムとして詳細な相対強度ノイズの特性が得ることができます。また、相対強度ノイズスペクトラムにフィルタ特性を施すことにより、任意の帯域の相対強度ノイズ特性を得ることができます。
一方、測定対象となるのは無変調のレーザ光(CW光)のみに成約されます。また、光検出器およびシグナルアナライザは十分に低雑音であることが要求され、解析ソフトウェアには物理原理に基づく高度な演算が要求されます。さらに、測定の確度を高めるために、システム全体の校正が必要になります。
過渡特性相対強度ノイズ測定システムの構造
過渡特性相対強度ノイズ測定システムの主な構成要素は、光検出器、オシロスコープおよび解析ソフトウェアです。
レーザー光は光検出器により電気信号に変換され、オシロスコープにより過渡特性として捕捉されます。この過渡特性の統計的な分布から、解析ソフトウェアを用いてRINを算出します。
このタイプのシステムは、変調されたレーザー光についても相対強度ノイズの測定が可能です。しかしながら、オシロスコープの分解能は相対強度ノイズ測定には不十分であることが多く、近年の光通信システムに要求される高度な相対強度ノイズ特性を評価するには不向きです。また、システムの帯域内の相対強度ノイズの平均値しか得られないため、レーザの相対強度ノイズ特性の分析に必要とされるデータを得ることができません。測定の帯域はハードウェアの帯域に限定され、周波数特性は補償できません。
相対強度ノイズの評価
相対強度ノイズ測定の結果は、通常、dB/Hzの単位で表示されます。この値が小さいほど、レーザーの雑音が少ないことを示します。
レーザーに要求される相対強度ノイズの値は、適用する通信の規格により異なります。近年の光トランシーバの規格では、-140 dB/Hzを下回る特性が要求されています。
また、相対強度ノイズの測定結果は、スペクトラムの周波数に依存します。レーザーを使用するシステムの帯域に応じて、相対強度ノイズを評価する必要があります。このため、相対強度ノイズを評価する周波数範囲は、50 GHzに及ぶ広帯域の測定が必要となっています。
相対強度ノイズのスペクトラム形状は、レーザーの構造によって異なります。レーザーの設計あるいは製造のパラメータの変化が相対強度ノイズに与える影響を解析する必要があります。
RINは外来ノイズやレーサーの戻り光に強く影響されます。これらの状況は、RINのスペクトラムの形状により判別が可能です。
相対強度ノイズ測定のお悩みは、SYCATUSの製品が解決します
相対強度ノイズ測定は、レーザーの性能を確保するために不可欠な工程であり、その理解と適切な運用が求められます。
しかし、相対強度ノイズを正しく測定するためには高度な専門知識や技術が必要とされます。
SYCATUSが提供するRIN測定システム「A0010A」は、高感度・低ノイズの光レシーバとKeysight Technologies(キーサイト・テクノロジー)社の高性能Xシリーズシグナルアナライザを使用し、世界最大の50GHzの広い測定帯域幅において、相対強度ノイズのスペクトラムを評価します。
SYCATUSが独自に開発したシステム全体のキャリブレーション技術により、測定の正確性と再現性に優れています。
ぜひ、弊社のA0010A 測定システムを、レーザの開発・製造・評価にご活用ください。
結論:相対強度ノイズ測定システムの役割とその解釈
相対強度ノイズ測定は、レーザーの性能を評価し、その品質を保証するための重要な工程です。しかし、測定システムの構造や性能が評価結果に大きく影響し、専門的な知識と技術を必要とするため、難易度が高い測定項目となっています。
また、相対強度ノイズ測定の結果の評価については、平均値だけでなく、周波数依存性も考慮すべき重要なポイントとなります。
適切な機能と正確な数値の算出を備えた測定システムを選択することで、確度の高い測定を行うことができるようになり、レーザーの性能向上につながります。
SYCATUSのA0010A 相対強度ノイズ測定システムは、相対強度ノイズ測定の専門知識を必要とせず、また複雑な測定プロセスを経ることなく、レーザーの相対強度ノイズの性能を正確かつ容易に評価することができます。
これはユーザーの時間と労力を節約するだけでなく、レーザーの品質向上にも大きく貢献します。是非とも、A0010A RIN測定システムをご利用ください。
次回は「光ノイズ測定システムは自作できるのか?」についてご紹介します。ご期待ください。
お気軽にお問い合わせください。
SYCATUSは、光通信と光センシング分野における測定の先駆者として、20年以上にわたり、測定のためのハードウェアとソフトウェアの統合システムを提供してきました。
これからも、専門性、独自性、正確性を基軸として開発された革新的な光計測技術を、全世界に発信してまいります。
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